もう一つの世界精神史

ヘーゲル哲学史は、世界精神の発生、展開、その合理の洞察と記述である。それは、ギリシャに発し、ゲルマン的国家精神によって完結する西洋哲学史であり、東洋哲学は、哲学史における一時的な存在理由しか持たない。この枠組みは、強引であるが、そう簡単に崩れるものではない。何故なら、事実として、ヨーロッパは、世界史の支配的な勢力をなし、西洋的な法と経済、学問教育のシステムが、支配的なシステムとして世界に浸透してきたからである。しかし、より広く見れば、西洋の支配もまた歴史的なもの、すなわち消え去ってゆくものかも知れない。そして、それは新しい精神の勃興を告げる露払いかも知れない。