過去について

過去については、それを「記憶」としてとらえ、それゆえ「現在から見た過去」であるという人がある。それでは、過去はさまざまあり、しかも変えられることになる。
確かに、過去は記憶によって保存されるし、記録によっても保存される。しかし、それはすでに保存されたもの、現在の人間たちによって料理される対象となったものであり、過去そのものではない。「過去は、変えられない」。過去は、決して手のとどかないものであり、しかも現在は、過去を前提にしてのみ存在するという事実は、立論の前提となるものではないかと思う。その上で、未来が過去を原因とする必然であるかどうかが問われることになる。仮に、そうであるとすれば、過去のすべては必然であったということになる。自由は、あくまで未来に関することであり、未来の可塑性にある。それが証明できれば、過去についても「あり得た複数の過去」があったことになる。