美しき天然

子供の頃、近くにサーカスがやってくるとむやみに興奮した。「美しき天然」のメロディが、もの凄く心をかき乱したなあ。このメロディとは関係ないが、「自然」より、「天然」の方が、より「まったく手を加えない、純粋に自然に生成されたもの」という感じがする。「美しい自然」というと、何か奇麗な絵を見ているようだ。天然というと、恥ずかしげもなくさらした肉体のような、生々しさが感じられる。大体、「自然科学」はあっても「天然科学」なんて言葉はない。「自然」という言葉には、天然の背後にある法則を見る人間の視点が見え透いている。天然は、そんなことを考えない。ただ、あるがままに、そこにあるもの、ただ受け入れるべきもの、というだけだ。自然の美しさは人工的であり、天然の美しさはあるがままだ。